・・・或者は代言人の玄関番の如く、或者は歯医者の零落の如く、或者は非番巡査の如く、また或者は浪花節語りの如く、壮士役者の馬の足の如く、その外見は千差万様なれども、その褌の汚さ加減はいずれもさぞやと察せられるものばかりである。彼らはまた己れが思想の・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・警察じゅう一種物々しい緊張に満ちている。非番巡査まで非常召集され顎紐をかけ脚絆をつけた連中が内庭と演武場に充満して佩剣をならしている。 高等室では主任と宿直だけがのこり、署の入口のところに二台大トラックが止って、二人の普通の運転手がその・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 第一の女 第二の女 第三の女 非番の老近侍 帝の供人同宮人数多 法王の供人数多及び弟子達 イタリー、サレルノの農夫の老夫婦 人民数多、及び不信心な遊び者 第一幕 ・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・阿部一族のことのあった二三年前の夏の日に、この小姓は非番で部屋に昼寝をしていた。そこへ相役の一人が供先から帰って真裸になって、手桶を提げて井戸へ水を汲みに行きかけたが、ふとこの小姓の寝ているのを見て、「おれがお供から帰ったに、水も汲んでくれ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫