・・・最後のトニカを響かせる準備の導音のような意味もあるらしい。 配役の選択がうまい。鈍重なスコッチとスマートなロンドン子と神経質なお坊っちゃんとの対照が三人の俳優で適当に代表されている。対話のユーモアやアイロニーが充分にわからないのは残念で・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・にこれらの各表象が頭に響くので、結局三つか四つの弦を同時に鳴らせた一つの和弦を聞くか、あるいは和弦を分解して交互に響かせるアルペジオを聞く場合と類似の過程である。つまり一つの句をたとえばピアノの譜で縦に重畳した若干の重音の串刺しに相当させる・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ 五ヵ年計画はこの階級的文化の声を、都会の勤労者住宅居住者五〇パーセントに、農村では三五パーセントの農戸へ響かせる計画だ。つまりラジオ拡声装置所は集団農場の拡大につれ二万四千から五万千ヵ所に、聴取者は二百万人だったのが四百万人になろうと・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・陸からは綱を引くものが諸声に力のリズムを響かせる。かくて波を蹴散らし、足をそろえ、声を合わせて舟を砂の上に引きずり上げて行く。 一艘上がるとともに、舟にいた若者たちは直ちに綱を取って海に向かった。次の一艘が磯波に乗り掛かると、ちょうど綱・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫