・・・正直に申し上げると、あなたのお言葉の全部が、かならずしも私にとって頂門の一針というわけのものでも無かったし、また、あなたの大声叱咤が私の全身を震撼させたというわけでも無かったのです。決して負け惜しみで言っているわけではありません。あなたが御・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・その反対に今の新人はその基本作因に自信がなく、ぐらついている、というお言葉は、まさに頂門の一針にて、的確なものと思いました。自信を、持ちたいと思います。 けれども私たちは、自信を持つことが出来ません。どうしたのでしょう。私たちは、決して・・・ 太宰治 「自信の無さ」
・・・ このゲエテの結論は、私にとって、私のような気の多い作家にとって、まことに頂門の一針であろう。あまりに数多い、あれもこれもの猟犬を、それは正に世界中のありとあらゆる種属の猟犬だったのかも知れない、その猟犬を引き連れて、意気揚々と狩猟に出・・・ 太宰治 「春の盗賊」
出典:青空文庫