・・・ こう申し出たとて、誤解をしてもらいたくないのは、この土地を諸君の頭数に分割して、諸君の私有にするという意味ではないのです。諸君が合同してこの土地全体を共有するようにお願いするのです。誰でも少し物を考える力のある人ならすぐわかることだと・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・ もとは、小屋も小さく、頭数も少なくって、母が一人で世話をしていたものだった。親爺は主に畠へ行っていた。健二は、三里ほど向うの醤油屋街へ働きに出ていた。だが、小作料のことから、田畑は昨秋、収穫をしたきりで耕されず、雑草が蔓るまゝに放任さ・・・ 黒島伝治 「豚群」
・・・学者の頭数はあれども、役に立つべき学者なきがゆえなり。今の学者が今より勉強して幾年を過ぎなば、この雇の外国人をやめてこれに交代すべきや。新聞紙の政談に志すも、この交代の日は容易に来ることなかるべし。 また、一昨年一二月八日に金星の日食あ・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・あのように厳しく、そこから逃げ出せば法律で以て罰せられ、牢屋にまで送られた徴用の勤め先が軍部への思惑だけで、収容力もないほどどっさり徴用工の頭数だけを揃えていることや、そのために宿舎、食糧、勤労そのものさえ、まともに運営されて行かず、日々が・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・政府が人民生活を再建出来ないでインフレーションの波のまにまに、当選したかと思うと、たちまち選挙違反で検挙されるような代議士の頭数ばかりあつめて、大臣病にきゅうきゅうとしているとき、もし私たち婦人が、心から自分の運命を守ってたち上らないならば・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
・・・ 手持現金は一人宛百円ずつ家族の頭数だけ新円に代えられるということで、隣組に登録されることとなった。このとき、私たちの周囲には、どんな現象が起っただろうか。六人家内の家庭で、旧円が使える間の生計費をさしひいたあと、現金で六百円並べてすぐ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫