・・・それはこの児の頭蓋骨の形を見てそう云ったものらしい。 生れて二十箇月後に階段から転がり落ちて、頭に青や黒の斑点が出来た。その後にも海岸の波止場から落ちて溺れかかった事もあった。また射的をしている人の鉄砲の筒口の正面へ突然顔を出して危うく・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・ 富豪であり、大地主であり、県政界の大立物である本田氏の、頭蓋骨にひびが入ったと云う、大きな事実に対して、証拠は夢であった。全で殴ったのは現実の誰かではなくて、人魂ででもあるようだった。 生霊や死霊に憑かれることは、昔からの云い慣わ・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・これは、日本の知性の歴史にとって忘られない明るさ、つよい憧憬、わが心はこの地球を抱く思いをさせたのであったが、その胸のふくらみにくらべて脚はよわく、かつ光栄ある頭蓋骨をのせるべき頸っ骨も案外によわかった。日本のいく久しい封建社会の歴史にもた・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・有名なイタリーの犯罪心理学者であったロンブロゾーは、人間の頭蓋骨の発達の型や、顔面の角度の関係やらを統計して今日でも適用されている所謂犯罪型という一タイプを規定した。更に彼はこれらの先天的に犯罪型の頭蓋をもって生れ、何か犯罪をやって現に拘禁・・・ 宮本百合子 「花のたより」
出典:青空文庫