・・・このような地質的多様性はそれを生じた地殻運動のためにも、また地質の相違による二次的原因からも、きわめて複雑な地形の分布、水陸の交錯を生み出した、その上にこうした土地に固有な火山現象の頻出がさらにいっそうその変化に特有な異彩を添えたようである・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・うして、そういう接触に人間が馴れ得るためにはそういう接触の時間的変化があまりに急激過ぎるか、ないしは人間の頭の適応性があまりに遅鈍であり過ぎるか、とにかくそのために接触界面の現象として色々な異常現象が頻出するかと思われるふしも少なくないよう・・・ 寺田寅彦 「猫の穴掘り」
・・・場合が頻出するのですね。私は太郎の遊んでいる姿を眺め、この可愛い小僧の精神の中に、どれ丈この生温い、受身な、姑息な生活気分を打開する力がこもっているかと思います。そしてどうかこの小僧が成長する時代が活溌であって、おのずからいきいきとした雰囲・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・どうして、血で血を洗う相続争いが頻出するかと詰問されるでしょう。 確に、それは世上の大半を覆うている事実です。けれども亦、私の書き連ねた一面も、動かすことの出来ない実相です。私共が箇性的差異として、各自の国民性を持ちながらも、世界人とし・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・円本時代に頻出した作家たちの海外漫遊は、ある一部の日本の作家達の経済的向上を語ったと同時に、微妙な独特性でその後におけるそれらの作家達の社会的動向に影響を及ぼした。 一九二九年以来、世界の事情は急変した。久米正雄氏が嘗て美しい夫人を伴っ・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・城主からこの城主へと、夫を換えさせられることが屡々珍しくなかったし、愛する男の子は敵方の血すじを保っているからと棄てさせられて、自分だけが実家の軍勢に囲まれた城から、甲斐なくも救い出されるという悲劇も頻出した。 武家時代に完成された文学・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫