・・・それが百五十五個食えるようになる。 肉類は四十九キログラムだったのが、六十二キログラムになる。牛乳、バタ類は、二百十八キログラムから三百三十九キログラムになるのだ。 五ヵ年計画は、体のいい軍備拡張だとブル新聞は云うが、ソヴェト同盟が・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・最も野生な人間は、食えるものは何でも食う。最も非人間的な男女は人間らしさを放棄した性へ還元して、両性関係を生きる。真実に自分を一個の社会人として自覚し、歴史のなかに自分一生の価値を見出そう、生きるに甲斐ある一生を送ろうと希う男女であるならば・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・ 子安講さ入っててもわれわれが食えるようにはならねえよ」「おーさ!」「子安講をやるんだら、いっそ組合総体が入ってしるべ! あんな裏切もんの指図でしるこたねえだ」「おーさ!」 月の光がガラス戸の外一面に流れ、宵の口は薄ら寒かっ・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
・・・経済的な点で、作家として食えるか食えないかということであれば、明治大正から現代にかけて活動している作家の殆ど皆が、あやうい綱をわたって来ているのである。この二三年の間にたかまって来ている問題には、文学そのものの社会的な意味についての疑問とい・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・ 本間氏はつづけて女が職業をもてばそれだけ男の就職線にふみこむことになるから、問題だと考えられるに対して、二十二歳の久美子さんは、さすがに今日の社会の現実は、決して男にも夫婦が食えるだけの収入を与えていないこと、既に女は経済の必要から職・・・ 宮本百合子 「短い感想」
・・・二三ペンスで茶色に乾いた燻製魚が一匹食える。調子っぱずれなラッパの音がした。よごれくさった白黒縞ののれんの奥だ。看板に「火酒」。臓物屋の店先で女子供が押し合った。 ピカデリー広場行の乗合自動車はかなくそでつまったような黒いロンドンを一方・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・働かないで食えるのは、企業家たちである。政府が最も「断乎」糾弾すべき本体は、このサボタージュのそれにある。しかし政府は、このことについては沈黙を守っている。自身、その企業家サボタージュと双生児の性質を持っている民主化へのサボタージュをやって・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫