・・・そこで仔細を聞いて見ると、この神下しの婆と云うのは、二三年以前に浅草あたりから今の所へ引越して来たので、占もすれば加持もする――それがまた飯綱でも使うのかと思うほど、霊顕があると云うのです。「君も知っているだろう。ついこの間魚政の女隠居が身・・・ 芥川竜之介 「妖婆」
・・・ この旅館が、秋葉山三尺坊が、飯綱権現へ、客を、たちものにしたところへ打撞ったのであろう、泣くより笑いだ。 その……饂飩二ぜんの昨夜を、むかし弥次郎、喜多八が、夕旅籠の蕎麦二ぜんに思い較べた。いささか仰山だが、不思議の縁というのはこ・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・先ず魔法、それから妖術、幻術、げほう、狐つかい、飯綱の法、荼吉尼の法、忍術、合気の術、キリシタンバテレンの法、口寄せ、識神をつかう。大概はこれらである。 これらの中、キリシタンの法は、少しは奇異を見せたものかも知らぬが、今からいえば理解・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・大内義弘亡滅の後は堺は細川の家領になったが、其の怜悧で、機変を能く伺うところの、冷酷険峻の、飯綱使い魔法使いと恐れられた細川政元が、其の頼み切った家臣の安富元家を此処の南の荘の奉行にしたが、政元の威権と元家の名誉とを以てしても、何様もいざこ・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
出典:青空文庫