・・・十二月二十四日の都下の諸新聞は、防共三首都の日本景気に氾濫したニュースと共に、四年間に亙った帝人事件が無罪と決定したこと並に、明春建国祭を期して一大国民運動をおこして特に国体明徴、日本精神の昂揚、個人主義、自由主義、功利主義、唯物主義の打破・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 現在のところでは上野の帝国図書館にしろ蔵書の量と種目とでは決して満足と云えないし、日比谷の市立図書館を、東亜の大首都東京市の代表図書館であると云わなければならないことには、些か忸怩たるものがありはしないだろうか。図書館へは学生のうちだ・・・ 宮本百合子 「実際に役立つ国民の書棚として図書館の改良」
・・・ 一九四〇年のオリンピックが東京へ来るときまった時、新聞で首都の美醜を写真にして対比したことがあった。醜と目された部分を四年の間に何とかせよという意味がふくまれていた。ところが、醜として撮影された部分が人生の情景として、感情をもって見れ・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・ 同じ歴史上の事件は、ペテルブルグのような首都の工場労働者の家庭では些か違った風に受けとられた。マクシム・ゴーリキイより三歳年下であったシャポワロフは、一八八一年の三月頃はまだペテルブルグの市立小学校へ通っていた。その日、教師はひどく亢・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 一九〇一年、ゴーリキイは初めて首都ペテルブルグに現れた。今は誰知らぬ者ない「フォマ・ゴルデーエフ」の作者として。「三人」の作者、「鷹の歌」の作者、フランスのアカデミーからユーゴー百年祭の招待が来た国際的な作家マクシム・ゴーリキイとして・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫