・・・題であるのを、自分はこの一挙に由て是非志村に打勝うという意気込だから一生懸命、学校から宅に帰ると一室に籠って書く、手本を本にして生意気にも実物の写生を試み、幸い自分の宅から一丁ばかり離れた桑園の中に借馬屋があるので、幾度となく其処の厩に通っ・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・一郎はすばやく帯をして、そして下駄をはいて土間をおり、馬屋の前を通ってくぐりをあけましたら、風がつめたい雨の粒といっしょにどっとはいって来ました。 馬屋のうしろのほうで何か戸がばたっと倒れ、馬はぶるっと鼻を鳴らしました。 一郎は風が・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・ 一郎はすばやく帯をしてそれから下駄をはいて土間に下り馬屋の前を通って潜りをあけましたら風がつめたい雨のつぶと一緒にどうっと入って来ました。馬屋のうしろの方で何かの戸がばたっと倒れ馬はぶるるっと鼻を鳴らしました。 一郎は風が胸の底ま・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
出典:青空文庫