・・・一九四九年が、国内的に誰にとってもいい年でなかったという現実は、日本の民主主義運動のやりかたや、解放運動の科学的な理論の骨格そのものについて沈潜した再検討を必要とする人々の気持のモメントともなっている。 この荒い波は、直接間接文学に影響・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・さまざまな形で社会主義建設の骨格になり輪となり、起重機となり、鋲となる鉄の美しい力、篤志労働団はその間から叫ぶ。――生産経済プランを百パーセントに! 篤志労働団は叫ぶ。――いや。生産経済プランを一二〇パーセントまで! と。そして、新しい輝く・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・この時期に日本の文学は、人間肯定の行手に様々の障害をみて、文芸評論は骨格を失い、批評文学という名で呼ばれる主観的な断想表現の道へ歩み入った。随筆が流行し、「小島の春」がひろく読まれ、一方では生産文学や、開拓文学が出現しはじめた時期であった。・・・ 宮本百合子 「子供の世界」
・・・すことは出来ず、そういう作家と、そのような作家を志して文学修業を怠らない人々とが、窮局において、世態の大波小波を根づよく凌いで、未曾有の質的低下を示していると云われている今日の文学の屑の中から、新たな骨格を具えて立ち出でて来ると、期待される・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・批評文学は、昨年既に批評家自身によって随筆化されたと云われていたが、ここに到って一層その理論的骨格を挫かれて来た。一方的な飛躍は、遂に近代世界の文学が永い努力の蓄積によってかち得て来た文学評価における科学性の意義の抹殺に到達したのである。・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・その原因は決して簡単でないが、主な一つは、文学の前時代の骨格であった個人的な自我が、内外の事情から崩壊したのに、正常な展開の可能が自他の条件にかけていて、文学によりひろい歴史性をもたらす次の成長へ順調にのびられず、自身の存在の確信のよりどこ・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
・・・の評論家は現実評価のよりどころを失ったとともに自分の身ぶり、スタイル、ものの云いまわしというようなところで読者をとらえてゆく術に長けて来ているため、読者の感覚が、現実と論理の奇術は行わない本筋の評論の骨格になじみにくくされていることがあげら・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ 去年から民主的な文学の翹望が語られ、人間性の再誕がよろこびをもっていわれはじめたとき、これらの文学の骨格には進転のための歯車とでもいうべき諸課題について、もっとこまかに、歴史的に話しだされるべきであったと思う。そういう努力がされていれ・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・砂糖は骨格をよわくする。砂糖は血液を酸化させる。砂糖は人間を神経質にする。実に砂糖の害悪を強調した。一方、勤労動員されたすべての少年少女が、何よりほしがったのは甘いものだった。肉体をこきつかわれた疲れを、せめて甘いものでいやしたくて、「上品・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・これにつないである馬は骨格がたくましく、栄養がいい。それが車につながれたのを忘れたように、ゆるやかに行く。馬の口を取っている男は背の直い大男である。それが肥えた馬、大きい車の霊ででもあるように、大股に行く。この男は左顧右眄することをなさない・・・ 森鴎外 「空車」
出典:青空文庫