・・・ 読者は文化的に高まるにつれ、文学作品を自分の経験とは独立して存在する芸術品として見るようになって来た。 加うるに、十月革命のときにはやっと五つか六つであった子供等が、既に青年となって読者層に参加して来た。 ソヴェトの若い新市民・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・このことの中に、階級の半身としてある婦人大衆の文化水準を高め、日に日に高まる闘争とともに独得な芸術作品を創造させて行くための努力が、プロレタリア文化活動本来の性質として既に予定されているのだ。 一九三二年の国際婦人デーの記念として、日本・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 社会的現実の各面に、今日この摩擦がより発展した形に於て高まるとも低まっていないからこそヒューマニズムの声が起ったのである。この時期に、文化・文学の辿って来た歴史の伝統の刻み目の内容を着実に含味しようとせず、空に飛行機を舞わせつつ、文学・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 日本の特殊性について、大切なこの論争がさかんに行われていて、まだ一定の決定を見ないうちに、ソヴェト同盟の社会主義の前進につれ、ドイツをはじめアメリカ諸国の革命的要因の高まるにつれてどんどん進むプロレタリア芸術の理論が、日本へも幅ひろい・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・その度はますます高まるでしょう。このような社会的条件のもとにいよいよ広汎に生れるまだプロレタリア的とはいえないが急進的革命的傾向をもち、その方向へ発展する要素と要求をもつ文学活動家に、より明確に現実を把握させ、掘り下げる方法を獲得させプロレ・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・ 空気の裡には交響楽のクレッセンドウのように都会の騒音が高まる。遽しく鳴らす電車のベルの音が、次第に濃くなる夕闇に閉じ罩められたように響き出すと、私の歩調は自ら速めになった。もう私の囲りでは、誰一人呑気に飾窓などを眺めている者はない。何・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・ 女性の勤労がひろまり高まるにつれて、文化の面でも女性の動きが現れるのは自然だけれども、その勤労が女性の歴史の成長にとってただの消耗であってはならないように、女性の書く本が目の先の過ぎゆく文化的泡沫であったりしては悲しいと思う。 も・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・というところにまでやがて高まる。にしても、今はまだその道のなかほどにあると思われるのである。 プロレタリア文学の多難な発展過程から見て、過去の「ナルプ」の活動にあった弱点から押しても、現在文学的野望に燃える多数の作家たちが、プロレタリア・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・婦人作家が人間としての自立性を高めて来るにつれて、――女の文学から、人間の文学に高まるにつれ――理性によって選ばれ、方向づけられたヒューマニティーの意欲ある展開が婦人の文学の上にも花咲くことは当然期待されることである。 作家について語る・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・私は動悸の高まるのを覚えた。私は嬉しさに思わず両手を高くささげた。讃嘆の語が私の口からほとばしり出た。坂の途中までのぼった時には、私はこの喜びを愛する者に分かちたい欲望に強くつかまれていた。―― 私は思う、要するにこれが創作の心理ではな・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫