・・・それは、あなたが一口に高踏派と言われているのと同じくらいの便宜上の分類に過ぎませぬが、私の小説の題材は、いつも私の身辺の茶飯事から採られているので、そんな名前をもらっているのです。私は、「たしかな事」だけを書きたかったのです。自分の掌で、明・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・もちろん営利を主とする会社の営業方針に縛られた映画人に前衛映画のような高踏的な製作をしいるのは無理であろうが、その縛繩の許す自由の範囲内でせめてスターンバーグや、ルービッチや、ルネ・クレールの程度においてオリジナルな日本映画を作ることができ・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・という彼の有名な La chanson d'automneの一篇の如きはヴェルレエヌが高踏派の詩人として最も幸福なる時代の作で、その時分には妻もあり友達もあり一定の職業もあった事を伝記の著者から教えられた。して見ると、「過ぎし日の事思出でて・・・ 永井荷風 「夏の町」
・・・見ずしてすぎるという高踏派的態度は実は「無力」の粉飾なのである。 プレハーノフの女弟子、ソヴェト同盟のマルクス主義機械論的修正派の最も有名な代表者アクセリロードは、「トルストイの創作を批評するのにもスピノザの哲学を分析する際にも、彼・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・い日本、風土からして異る日本に求めたとしてもそれは無理である、ヨーロッパ文学の真価も、実にきわめて少数のもののみが理解し得るのであるとして、自分は、ひとりローマをみて来たものの苦しくよろこばしい回顧、高踏的な孤独感を抱きつつ、真直に日本の全・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫