・・・やはり第一幕の日野左衛門の内と、第三幕の善鸞遊興の場と、四幕の黒谷墓地とが芝居として成功する。ハンドルングが多いからだ。しかし監督がよければ、演出次第で芝居としても成功しないはずはないと思うのだが、どういうものか。 ともかくもこの戯曲は・・・ 倉田百三 「『出家とその弟子』の追憶」
・・・ 中学時代に始めての京都見物に行った事がある。黒谷とか金閣寺とかいう所へ行くと、案内の小僧さんが建築の各部分の什物の品々の来歴などを一々説明してくれる。その一種特別な節をつけた口調も田舎者の私には珍しかったが、それよりも、その説明がいか・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・のいざ月もよし牛祭又嘘を月夜に釜の時雨哉葛の葉のうらみ顔なる細雨かな頭巾著て声こもりくの初瀬法師 晋子三十三回忌辰擂盆のみそみめぐりや寺の霜 または 題白川黒谷の隣は白し蕎麦の花のごとき固・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
出典:青空文庫