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・・・ 私はそんなあやふやな態度で世の中へ出てとうとう教師になったというより教師にされてしまったのです。幸に語学の方は怪しいにせよ、どうかこうかお茶を濁して行かれるから、その日その日はまあ無事に済んでいましたが、腹の中は常に空虚でした。空虚な・・・
夏目漱石
「私の個人主義」
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・・・的な文学の評価の基準の一つとなる社会発展の歴史的な現実認識、文学における階級性の自覚の問題は一九三三年、屈伏に便利な多くの歪曲をもって行われた過去のプロレタリア文学運動批判ということのなかで、きわめてあやふやな、動揺的なものとされた。そして・・・
宮本百合子
「両輪」