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・・・官能表徴は感覚表徴の一属性であってより最も感性的な感覚表徴の一部である。このため官能表徴と感覚表徴との明確な範疇綱目を限定することは最も困難なことではあるが、しかし、少くとも清少納言の感覚は、あれは感覚ではなく官能が静冷で鮮烈であったのだ。・・・
横光利一
「新感覚論」
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・・・ところが五、六年前、非常に雨の多かった年に、中庭の一部に一面に杉苔が芽を出した。秋ごろには、京都の杉苔の庭と同じように、一坪くらいの地面にふくふくと生えそろった。これはしめたと思って大切に取り扱い庭一面に広がるのを楽しみにしていたのであるが・・・
和辻哲郎
「京の四季」