・・・日本は、封建的偏見と闘いながら、婦人が自身の科学的技術を確立させてゆかねばならないという第一期的状態にあります。そしてその闘いは、現代において二十世紀はじまりのヨーロッパにおいてのように、個人の偶然もっている条件――才能と環境――だけに頼ら・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・汲出櫓の上に登っているのであるが、右手を見ると、粗末な石垣のすぐそこから曇天と風とで荒々しく濁ったカスピ海がひろがり、海の中へも一基、二基、三基と汲出櫓が列をなしてのり込んで行っている。 風と海のざわめきとの間にも微かなキューキューいう・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・これに反して、新しい人間生活のために暗渠をつくり、灌漑用水を掘り、排水路をつけて、自身の歴史をみのらしてゆこうとする事業は、まったく新しい事業である。一揆、暴動などという悲劇的な正義の爆発の道をとおらずに、人民の全線が抑圧に抵抗しようとする・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・眠けざましに、イシオピア人の真似でもして天の一揆を工もうか。ヴィンダー あの時結局勝ったのが誰だか忘れるな、矢張レーだ。ミーダ 俺達にでも堪えるべき運命があると云うのか?――ああ、ああ、退屈は明敏な俺の呪咀まで腐らせそうだ!ヴィ・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・カラ 今日おくれたりしては、一期の不覚です。この吉日をとり逃したら又何時ふんだんな人間の涙と呻きが私の喉に流れ込むかしれたものではない。一面濛々とした雲の海。凄じい風に押されて、彼方に一団此方に一団とかたまった電光を含む叢雲・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・饑饉が終るとコレラが蔓延し、一揆があちらこちらで起ったが、このとき、怒った大衆の標的とされたのは誰あろう、ともに餓えて疫病と闘った急進的知識人と医者とであった。 このからくりに采配をふるったのは、ツァーの有名な警視総監である大官ポベドノ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・特に高崎郡領一揆と大久保利通にその例を見る維新の封建地主勢力の庇護のもとにあった志士団と革命的農民との敵対関係へ、われわれの注意を向けている点は見落すことのできないことである。 明治維新を「その被圧迫階級の立場から描くことこそマルクス・・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・感をもたれてる〔欄外に〕 マクシミリアン・ラマルク 1770―1832 はナポレオン帝政時代の名将軍 七月帝政時代にも反対派代議士として有名 コレラで死 葬式が暴動のキッカケとなった ジャンヌ一揆二日間。○ルシアンの性格は英雄主・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
・・・ただ半蔵が百姓の一揆を理解しても、或はセイタを背負うても、自身の「限界を越えることは出来ぬのである」とだけ書きすてず、何故それを越え得ず、越えなかったのはどの点だ、と説明すべきだったと思う。労働者のやるようなことをやったって労働者じゃない、・・・ 宮本百合子 「「夜明け前」についての私信」
・・・が、一揆的な反抗は成功しないで捕われ、モスクワへ連れて来られた上今も赤い広場にある首切台で、処刑された。 室が、一つ一つ進むにつれ、だんだん面白い写真がふえて来る。有名な十二月党の革命的計画についての調書の一部、処刑された数人の党員・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫