・・・故にする方は、前もって、その底まで考える必要あり。陰性の我ままと云うべし。 自分とT先生との心持 自分とT先生との心持――寧ろ、自分のT先生に対する心持は深く、強く、ごまかし難いものだ。 師弟の関係に於て何かのよ・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
・・・ 父は東京に住んでいた家族にこのようにして書いていたばかりでなく、福島県の開成山に隠棲していた老母に、凡そこの二分の一ぐらいのエハガキだよりを送って居ます。当時は外国雑誌など珍らしかったので、老母のところには、父が写真説明を日本語で細か・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・十九ヵ条は、先ず女を「女は陰性也、陰は夜にて暗し、故に女は男に比るに愚にて目前なる然るべきことをも知ら」ぬもの、という立て前において、さてそこから順々に女子の心得を書き連ねたものである。「女子は成長して他人の家へ行き姑に仕うるもの、夫に仕う・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・多分馬関だろうと思って、僕は随分熱心に聞いて廻ったのだが、結果が陰性だった。」「随分御苦労なわけだね」と、遠慮深い戸川は主人の顔を見て云った。 主人はただにやりにやり笑っている。 富田は少し酔っているので、論鋒がいよいよ主人に向・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫