・・・『人がわしを見たッて、わしを。そのわしを見つけたチゅうのは全体たれのこッてござりますべエ。』『馬具匠のマランダン。』 そこで老人確かに覚えがある、わかった、真っ赤になって怒った。『おやッ! 彼奴がわしを見たッて、あの悪党が。・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
朝小間使の雪が火鉢に火を入れに来た時、奥さんが不安らしい顔をして、「秀麿の部屋にはゆうべも又電気が附いていたね」と云った。「おや。さようでございましたか。先っき瓦斯煖炉に火を附けにまいりました時は、明りはお消しになって・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 女。おや。そうでしたか。あの手紙はあなたの所で落しましたのですかねえ。 男。ええ。そうでした。ところでわたくしのためにはそれが好都合だったのです。翌日わたくしが急いでオペラ座へ往って見ますと、お母あ様と御夫婦とでちゃんと桟敷にいら・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
・・・そうして「おや」と思った。そこには次の汽車との間に今までなかったはずの汽車の時間が掲げてあるのである。私はいくらか救われたような感じであたりを見回した。なるほど大きな掲示が出ている。その臨時汽車はすぐ前日から運転し始めたのだった。「こいつは・・・ 和辻哲郎 「停車場で感じたこと」
出典:青空文庫