・・・ 町では小歌劇、蚤の見世物。クニッペルがひらひらのついた流行型のパラソルをさしてそれを女優らしく笑いながら観ている。チェホフは黒い服だ。書斎は今ランプが点っている。まだ石油は臭わない。かなりよい。その下でチェホフは白い紙を展べ、遠くはな・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・私は革命がそのような過激な手段によって達せられるものではないと考えている。」「われわれマルクス・レーニン主義の党は、働く大衆をもっとも愛し、その幸福をもっともよろこぶことができ、その不幸をもっとも悲しむことができる。働く大衆の一人を失う・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 一部過激学生の 反戦平和運動に利用されるからと云って。 内田祥三 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・ 二十歳のバルザックはレディギュール通りの屋根裏で、ストーブもたけず、父親の古外套で慄える体をくるみながら、ひどい勢で先ず幾つかの喜歌劇を書いた。喜劇「二人の哲学者」というのも書いた。けれども、その時分は、ただ筆蹟がきれいだということ位・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・確に過激派だ」 すっかり理解が出来たと云うのではなくても、思って居たこと丈は兎に角云って、少しは心も溶けたと云う風を見、其日は帰った。 Aは、詰らない、何故そう判らないのか、と云って厭な顔をする。特に、彼にとっては、母が、陰で小細工・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ リュシアンはp.82「ヴァンデックス輩と同じ思想をいだくほど、過激な正義心をもち合わせていない。なるほど アメリカへ行けばまことに正しい合理的この上ない仲間入りは出来るだろう。しかしそいつらには品がなくてしょっちゅうドルのこと・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
・・・ いわゆる少女向の雑誌や、少女歌劇につながる趣味――少女趣味一般は、若いひとたち自身にわたしたちとはちがうと思われている要素を少なからずもっている。 なぜなら、十代のひとびとがしんに求めているのは、人間として、女としてどう生きてゆく・・・ 宮本百合子 「若い人たちの意志」
・・・ 風俗小説の範囲で現実を見るだけでも、女の社会的な動きの一方には、婦人の参議院議員からはじまって少女歌劇の女優、婦人作家をふくむ女重役というものがあらわれているし、兜町・堂島に、女の相場がはやって来ています。その一方では、民主的な日本の・・・ 宮本百合子 「私の書きたい女性」
・・・Goethe が小さいながら一国の国務大臣をしていたり、ずっと下って Disraeli が内閣に立って、帝国主義の政治をしたようなのは例外で、多くは過激な言論をしたり、不検束な挙動をしたりする。George Sand と Eugユウジェエヌ・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・父はただいわゆる過激思想だけを恐れているのではない。総じて人心の腐敗に対して公憤を抱いているのである。過激思想ももちろんその中に含まれているであろうが、過激思想を退治しようとしている為政者の言行といえどもまたその中に含まれていないのではない・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫