・・・ するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくな・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・(そいじゃ頂(はっは、なあに、こごらのご馳走(地質です。もうからない仕事餅を噛み切って呑み下してまた云った。(化石化石も嘉吉は知っていた。(ええ海百合です。外でもとりました。この岩はまだ上流にも二、三ヶ所学生は何でももう早く餅をげろ呑みにし・・・ 宮沢賢治 「十六日」
・・・その旅人と云っても、馬を扱う人の外は、薬屋か林務官、化石を探す学生、測量師など、ほんの僅かなものでした。 今年も、もう空に、透き徹った秋の粉が一面散り渡るようになりました。 雲がちぎれ、風が吹き、夏の休みももう明日だけです。 達・・・ 宮沢賢治 「種山ヶ原」
・・・すっかり悄気て化石してしまったようじゃありませんか。」「石になるとは。そいつはあんまりひどすぎる。おおい。梨の木。木のまんまでいいんだよ。けれども仲々人の命令をすなおに用いるやつらじゃないんです。」「それより向うのくだものの木の踊り・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・「ほんとうの美はそんな固定した化石した模型のようなもんじゃないんです。対称の法則に叶うって云ったって実は対称の精神を有っているというぐらいのことが望ましいのです。」「ほんとうにそうだと思いますわ。」樺の木のやさしい声が又しました。土・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・ほんとうにそれらの大きな黒いものは参の星が天のまん中に来てももっと西へ傾いてもじっと化石したようにうごかなかった。 宮沢賢治 「なめとこ山の熊」
・・・啜り泣きの声と吐息の満ちた中に私は只化石した様に立って居る。「何か奇蹟が表われる事だろう。 残されて歎く両親のため同胞のために。 奇蹟も表われなかった。 遠い潮鳴りの様に聞いた啜りなきの声もそれをきき分けて自分の立っ・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・ 掘り出されない数限りない宝石や化石の底を洗って、サラサラ、サラサラとせせらぐ水。 絶えず燃えくるめき、うなりを立てる不思議な焔。 その熱と、その水とに潤されて、地の濃やかな肌からは湿っぽい、なごやかな薫りが立ちのぼり、老木の切・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・その十五年の後に、一層しっかりと人間らしさを発展させた自身を彼女が見出そうとするならば、過去の年月の間で一人の女性を化石させてしまった家庭というもののありかた、夫というもののありかたそのものを、日本の社会の問題として批判し闘ってゆく男の新し・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・それでも男の顔の色が一寸変ったのを彼の女は知って居た。化石した様にだまって突立って居た男は、押し出される様に「じょうだんは云いっこなし……」男はどうぞこれより私を驚かせる事は云わないでネと云う様な目をして彼の女を見つめながら云った。「ほ・・・ 宮本百合子 「芽生」
出典:青空文庫