・・・ 映画の成立 以上のようなわけであるから、映画とは何かという問題を考えるには、抽象的な議論をする前にまず映画がどうして作られるかという実際上の過程を考えてみることが必要であると思う。 一つの映画が作り上げられるま・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・しかし大多数の読者がこの点について一通りの予備知識を備えているものと仮定してもおそらくたいした不都合はあるまいと思う。 ついでながら、自分のような門外漢がこの講座のこの特殊項目に筆を染めるという僣越をあえてするに至った因縁について一言し・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・現在のロシア、あるいはむしろ日本の若干のロシア崇拝の芸術家の仮定しているロシアの影像のかなたに存する現実のロシアに、こういう、古典的の意味での芸術の存在することはむしろ一種のアイロニーであるかもしれないのである。 ほこりっぽい、乾苦しい・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・そうして、これらの静的なものから静的なものへの推移の過程の中に動的なるものを求め、そうしてそこに「シーンのメロディ」を作っているように見える。このようなことはいわゆるモンタージュの一つの技法であって、何もこの映画ばかりに限ったことはなく、「・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・として知られた記録どおりの現象が、実際にあったものと仮定し、またこれが筑波地方の地鳴りと同一系統の地球物理学的現象であると仮定すると、それから多少興味のある地震学上のスペキュレーションを組み立てる事ができる。 ジャンの記録はすでに百年前・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・夜間は陸上の空気が海上のものよりも著しく冷却するから、これと反対の過程が行なわれて、上層では海のほうから陸へ、下層では陸から海へ微風が吹く、これがいわゆる陸風である。 これはすでによく知られた事実である。 上層と下層とで風向きが反対・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・ 案内者のいう所がすべて正しく少しの誤謬がないと仮定しても、そればかりに頼る時は自身の観察力や考察力を麻痺させる弊は免れ難い。何でも鵜呑みにしては消化されない、歯の咀嚼能力は退化し、食ったものは栄養にならない。しかるに如何なる案内者とい・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・すなわち一つの選択過程が行なわれる。この選択を決定する標準はもはや必ずしも普遍的単義的なものではなくて、学者の学的常識や内察や勘や、ともかくも厳密な意味では科学的でない因子の総合作用によってはじめて成立するものである。もちろんその省略が妥当・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・最初の問題のつかみ方、計算の途中に入り込む仮定や省略のしかたによって少しずついろいろ違った結論に達する。しかもそれらの各種の論文は互いに相鼎立して、どちらも、それ自身としては正当でありうるのである。ただそれらの間の優劣を区別する場合の目標は・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・多数の研究者のうちで、何かしら一つの仕事に成功して学位を得る人の数が研究者全体の数に対する統計的比率を不変と仮定しても、研究者の総数がN倍になれば博士の数もN倍になる。のみならず、競争が劇しくなるために研究者の努力が劇しくなればこの比率も増・・・ 寺田寅彦 「学位について」
出典:青空文庫