・・・何も彼も餓鬼等の中がいっちええわ、なあ、お前様。 お前様みたいな方は、若いうちも年取りなっても同じなんべえけど、己等みたいなものは、婆になったらはあ、もうこれだ、これだ。と変な笑い方をして手を左右に振った。 けれ共、この婆に・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ 子供が可愛いという一般的な日常の感情さえ味うことの出来ない、何かの餓鬼なのであろうか? 舟橋氏は、私が先頃報知新聞に九月の創作についての感想をかいた中で、「新胎」のテーマが含んでいる歴史的な方向、氏によって嘗て提唱された能動精神のその・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・己達夫婦が飯を食って、餓鬼共の学校へ行く銭が出せれば好い。金を溜めるようなしみったれは江戸子じゃあねえ。」 こういう話になると、独り博士の友達が喜んで聞くばかりではない。女中達も面白がって聞く。児髷の子供も、何か分からないなりに、その爽・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
・・・「やれやれ、餓鬼どもを片づけて身が軽うなった」と言って、宮崎の三郎は受け取った銭を懐に入れた。そして波止場の酒店にはいった。 ―――――――――――― 一抱えに余る柱を立て並べて造った大廈の奥深い広間に一間四方の・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・厄介な餓鬼やのう!」「腹へって腹へって、お前、負うてくれんか!」「うす汚い! 手前のようなやつ、負えるかい。」 安次は片手で胸を圧えて、裂けた三尺のひと端を長く腰から垂らしたまま曳かれていった。痩せた片肩がひどく怒って見えるのは・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫