・・・王 わしもじゃ、わしはあまり下らぬ事をききすぎたのでがさがさとまるで一日中流シ元で洗いものをする水仕女の手の甲の様になった心を持って居るのじゃ。老人 したがのう、貴方様。尊い身分の人にはわからぬ事でござりまするが、貧しい一年中一枚・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・妙にがさがさな声を出したりいやに光る眼をもって居たり、あれを見ると私はむかつく様になってしまいます。ほんとうに何ていやな見っともない事なんでしょう。それが女はどうでしょう。 皮膚はうるおいが出て来て、くびがきれいに見える様になりましょう・・・ 宮本百合子 「芽生」
・・・その時がさがさと云う音がしたそうだ。小川君がそっと中を覗いて見ると、粟稈が一ぱいに散らばっている。それが窓に障って、がさがさ云ったのだね。それは好いが、そこらに甑のような物やら、籠のような物やら置いてあって、その奥に粟稈に半分埋まって、人が・・・ 森鴎外 「鼠坂」
出典:青空文庫