・・・ まず根底をなす社会機構が、もっとすべての人民にとって人間的に生きる可能性を与えるようにならない限り、窮極は社会関係の最も綜合的な表現である恋愛や結婚の問題が、人類的な規範で、各人の幸福にまで発展せられないこともまた大多数の人々に、はっ・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・民族性を古典の規範にしばりつけて考える誤りも明白に理解されるし、さりとて、その新しい展開が単に技法上の新展開だけで齎らされるものでないことも、痛切に考えられる。芸術の素質として民族に特有なものは、いつも具体的であって、それがさけることが出来・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・ 三 先ず、女性の作家に加えられた評言に就て反省して見る事は、即ち持つならば或る欠点や、羈絆から脱して、よりよい次の一歩を踏出す事に成るのではないだろうか。 自分はそれを詰らない事だとも、恥しい事だとも・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・男性への爆弾というとき、我々若きジェネレーションは、女から女独特の爆発力を加えて装填した爆弾を男に只ぶつけるのではなくて、男にそれを確かと受とめさせ、とって直して、男と女との踵に重い今日の社会的羈絆から諸共に解放されようとする、その役に立て・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 家庭購買組合も見たところ大きい規範で経営されてはいるけれど、各戸を実際にまわっている実務員が報酬を歩合い制でもらっているものだから、月の売上げの多額なところへ便宜を計るという致命的な弱点をもっている。少人数の家では少額ならざるを得ない・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・今日の発展段階に立って過去の作家同盟の活動を振りかえった時、すべての人が認めざるを得ないある規範主義が、作品批評の場合にも現れた。 それに対してプロレタリア作家の大部分が、それぞれ自身の発展的傾向、あるいは消極的な傾向にしたがって、その・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・神と悪魔とに緊張せしめる、○ドストイェフスキーは決して規範を求めず、ただ充実をもつのみである。○彼は運命の情熱的賭博においては賭物として遺憾なきまでに自らを投げ出すのである、なぜなら彼は赤と黒、死と生との流転の中にのみ酩酊の快さで自・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ かかる意味において、われらは同志小林の闘争の生涯がボルシェビキ的強情さによって貫徹され、高き規範を示したことに無限の敬意を捧げるのである。同志小林が身を挺して確保した革命的到達点を、理論、創作、組織的全活動の分野において更に推進させ、・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・母の属した社会の羈絆がそれを圧しつけて萎えさせたり、歪めたりさえしなかったら、鍛錬を経て花咲くべき才能をも持っていたと思う。 母は、今の世の中のしきたりにおとなしく屈従して暮すには強く、しかし強く社会的に何事かを貫徹して生きるためにはま・・・ 宮本百合子 「母」
・・・フランス散文の規範のようなメリメは異国趣味でロマンティックな題材と情熱とを、厳しく選択して理性的に配置した文章の鮮明な簡勁な輪廓の中にうちこんでいる。メリメの作品の力と欠点とは整然とした描写の統制の中にある。 バルザックの文章は、書かれ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫