・・・「失業者の救済なんてどうせ出来っこないんだから、片っぱすから戦争へ出して殺しっちゃえば世話はいらないんだ」 極めて冷静な酷薄な調子で云った。「この社会には中流人だけあればいいんだよ」「中流人て、たとえばどういう人なんです?」・・・ 宮本百合子 「刻々」
是非を超えた最後の手段として離婚は認めなければなりません。内外的原因によって過った結婚をし人間としてその異性との生活が、救済の余地無い程の破綻を生じた場合、より以上の不正、人格的堕落を防止する為には、強制的、又相互的離婚を・・・ 宮本百合子 「心ひとつ」
・・・ 戦争によって配偶を失った女の人たち、その家族を失った子供たちのために、「救済」という形が考えられているうちは、たとえそれが部分的にかなりゆきとどいた方式でされようとも、世界人類の頭上を不吉なはげたかのように舞っている不幸の本質がとりの・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・神川平助の性格でもあるのだが、年齢が語る幾歳月の生活感情の習慣が、代官神川の農民救済の善意を独断なものにして、そこからの悲劇がかもされてゆく。その父の仕事を支持しながら、そのやりかたには、人間的に反撥する荘太郎を中心においたとしたら、この一・・・ 宮本百合子 「作品の主人公と心理の翳」
・・・金沢迄無事に行くことは行ったが、駅に下ると、金沢の十五連隊の兵、電線工夫等が大勢、他、救済者が、皆糧食を背負い、草鞋バキ、殺気立った有様でつめかけて居る。急行は何方につくのかときいて見ると、ブリッジを渡った彼方だと云う。A、バスケット、かん・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ なぜなら ロシア、それは彼の避難所であり、彼の救済だからである。ここに来て彼の言葉はもはや分裂ではなくて 信条になる。神は彼に対して沈黙してしまった。だから 彼は自己と良心そのものとの仲介者として一人のキリスト、新しい人間の新しい告示・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・千呆禅師が天和二年に長崎の饑饉救済をしたという大釜の前に立って居ると、庫裡からひどく仇っぽさのある細君が吾妻下駄をからころ鳴して出て来た。龍宮造りの楼門のところで遊んで居る息子を頻りに呼ぶ。息子は来ず、労働服をつけた男が家に帰るらしく石段を・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・ 伊豆地方の大震災 惨たる各地の被害 震源地は丹那盆地 死者二百三十二名 伊豆震災救済策 震災地方の納税減免 国庫負担法で業務教育費交付 両腕の動かしかたに共通の一種独特の職業的癖をもっている日本の列車ボーイ・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・その年は饑饉だったので、貧民救済事業として行われたので、県庁の保助があった。女から子供まで。 人員 二三百人 ダイナマイトのきかない岩は何? 日数 二月位。 ○崖中から水がたれて居る。 ○岩の間に菫の小さい葉がしげり・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・山川菊栄などが実際の発起者で、与謝野晶子、埴原久和代、其の他多勢とロシヤ飢饉救済会の仕事をした。一九二三年関東大震災の被害は直接は受けなかった。三宅やす子の『ウーマンカレント』を中心とし小規模の救援事業をした。野・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫