一 我々は創作者として活らく時、その創作の心理を観察するだけの余裕を持たない。我々はただ創作衝動を感ずる。内心に萌え出たある形象が漸次醗酵し成長して行くことを感ずる。そうして我々はハッキリつかみ、明確に表現しようと努力する。そこ・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
・・・ちょうど水墨画の溌剌とした筆触が描かれる形象の要求する線ではなくして、むしろ形象の自然性を否定するところに生じて来るごとく、能面の生動もまた自然的な生の表情を否定するところに生じてくるのである。 そこで我々は能面のこの作り方が、色彩と形・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
・・・はただ人形使いの運動においてのみ形成される形なのであって、静止し凝固した形象なのではない。従って彫刻とは最も縁遠いものである。 たぶんこの事を指摘するためであったろうと思われるが、桐竹紋十郎氏は「狐」を持ち出して、それが使い方一つで犬に・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫