・・・この間来なすった時、明治神宮の前できび団子でもこさえて売ろうかって云いなさるから、そりゃあ面白い、うんとおやりなさい、後援してあげましょう、と云いましたが、まさか、実際にそれをするのはいやなんですね。考案は、大きなのや小さなのや種々雑多なの・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
・・・或る箇人、例えば、父、良人、長兄などと云う一人の力に縋って、その人の庇護、その人の助力、その後援によって、一族円満に、金持もなければ貧しい者もない風で暮すのを理想とするよりは、もう一歩、人生に対して積極であると思います。先ず自己を、次に自己・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・日本プロレタリア文化連盟に加盟する十三の文化団体は、講演会、展覧会、芝居の公演と精力的に参加した。日本では工場で働く婦人の数だけでも男の労働者の四割八分を占めている。そんなに大勢いる勤労婦人のための特別な催しを、この挨拶週間のプログラムから・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・その自動車会社がしっかりしているので目前の月給は悪くないのであったが、小枝子は或る時不図そのことに気がつくと不安になって、新劇の或る女優の後援会で知りあった多喜子のところへ洋裁を習いに来はじめたのであった。今では、ひとのものも縫えるところま・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
・・・を唱え、某方面の後援によって満州へ出かけられることに誇りを感じているらしい姿も、林氏の言葉につれて読者の心に思い浮んで来るのである。 文学または思想における日本的なものの追求が近頃これらの作家達によって熱心にされている。万葉、王朝時代の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・の著作権を侵害せる事実明白なるにより、劇作家協会の後援を得て社長大谷氏を訴う。国民文芸会有志の熱心なる調停に動かされ、和解す。その際松竹より提出せし金円は著作権法改正運動に使用する条件を附して劇作家協会に寄附する。 一九二六年。劇作家協・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・跡に残っている人は為方がないので、公園内の飲食店で催す演奏会へでも往って、夜なかまで涼みます。だいぶ北極が近くなっている国ですから、そんなにして遊んで帰って、夜なかを過ぎて寝ようとすると、もう窓が明るくなり掛かっています。」 かれこれす・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 一 町なかの公園に道化方の出て勤める小屋があって、そこに妙な男がいた。名をツァウォツキイと云った。ツァウォツキイはえらい喧嘩坊で、誰をでも相手に喧嘩をする。人を打つ。どうかすると小刀で衝く。窃盗をする。詐偽をする。・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・何ぜなら、もしも然るがように新時代の意義が生活の感覚化にありとするならば、いかなるものと雖もそれらの人々のより高きを望む悟性に信頼し、より高遠な、より健康な生活への批判と創造とをそれらの人々に強いるべきが、新しき生活の創造へわれわれを展開さ・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・友人の群を心持ちの上の後援として人と争ったりなんぞはしない。自分はただ独りだ。ただ独りでいいのだ。 しかしながらこれは自分の全部であったろうか。自分は自分の内の愛を殺戮するために、忍びやかに苦痛を感じてはいなかったろうか。自分は自分の嘲・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫