・・・西鶴などを盛にうつしたり、口語訳にしたりして表紙をつけ手製本をつくった。与謝野晶子の「口語訳源氏物語」のまねをして「錦木」という長篇小説を書いた。森の魔女の話も書いた。両親たちは自分たちの生活にいそがしい。家庭生活や夫婦生活のこまか・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・日本の文学が現代の段階までに内包して来ている諸条件と、急速に変化しつつある世態とが、交互に鋭い角度で作用しあって、例えば、行動の価値と文学の本質及びその仕事に従うこととの間に、何か文学が社会的行動でないかのような、文学への献身に確信を失わせ・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・という論文の結論で、将来自由律の口語詩が「思想的な文学の、より自由な開花が社会的に保証さるべき時代に於て著しく発展するだろう、という予測」を示している。 詩の社会的位置という国際ペンクラブの一課題から入るだけでさえも、われわれの周囲の文・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・作家も読者も作中人物さえもそれぞれ時代の歴史を照りかえし、またその歴史を交互に営んで生きつづけてきているのであるから。手近な文学作品の書棚で私たちの見出すのは何だろう。 シェークスピア全集は随分流布した。「ハムレット」のオフェリヤ。「マ・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
源氏物語を現代の口語に訳する必要がありましょうか。この問題を解決しようと試みることは、この本の序文として適当だろうかと思われます。 単に必要があるかと申しますのは、精しくいえば、時代がそれを要求するかということになりま・・・ 森鴎外 「『新訳源氏物語』初版の序」
・・・私は口語でも文語でも、全体として扱う。F君はそれを一々語格上から分析せずには置かない。私は Koeber さんの哲学入門を開いて、初のペエジから字を逐って訳して聞せた。しかも勉めて仏経の語を用いて訳するようにした。唯識を自在に講釈するだけの・・・ 森鴎外 「二人の友」
・・・せ、より自我の核心を把握して構成派的力学形式をとることに於て、表現派とダダイズムは例えば今東光氏の諸作に於けるが如く、石浜金作氏の近作に於けるが如く、時間空間の観念無視のみならず一切の形式破壊に心象の交互作用を端的に投擲することに於て、また・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫