・・・ 外国の人も日本文化の特長を手早くとりまとめようとするとき、こういう特長をとらえたことは、卑俗な日本の輸出品が、やすい香水入線香にフジヤマ、ゲイシャ、サクラなどという名をつけていたのでもわかる。戦争中、日本の超国家主義者たちは、ヒットラ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ハンケチには香水がついている。グラフィーラは後毛をたらしたまま、歪んだ笑顔で、「香水をつけ出したんだね。」と云った。「とてもいい香水だ……何を拭いてるのさ?」 食いつくようにドミトリーを見つめていたグラフィーラの眼が、忽ち涙・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・例えばどんなに税が高くあろうとも妻や妹はウビガンの香水を常用しているという部分の人々にはどういう感じをおこさせるかしらないが、都会の人口の大多数を占める下級中級の若いサラリーマン、勤労青年たちが、いささかの慰みとしてアパートの部屋でかけて聴・・・ 宮本百合子 「カメラの焦点」
・・・ この二三年来、日本の婦人たちの鏡台の上からコティの香水だの白粉だのが姿を消した。ナポレオンと同じコルシカ島のアジャチオ生れのこの敏腕な香水屋が、世界の香水界を支配する実業界の王者となったとき、彼は香水の瓶の形を工夫していることだけには・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
出典:青空文庫