・・・フロはあるし、こせこせした心配はないし、その上、この土曜日から小学校は正月休みでしずかだし、仕事は面白いし、私もやはり些の懸念もない有様です。 小学校について、この前の手紙には大してやかましさが苦にならぬとかきましたが、その後、あなたに・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・隅から隅まで語りつくされているこせこせした頁を明けくれ眺めて、子供の心は受動性ばかりつよめられてゆくだろう。小学校一年生の算数の本にもこの紙面にスペースの足りない憾みは感じられるのである。良書は内容の徳性に加えて、子供の心理の抑揚の溌剌さが・・・ 宮本百合子 「“子供の本”について」
・・・ゴーリキイは主人が家具、敷物、鏡その他に執着し、こせこせとそれらを自分の家の中に詰め込むのが厭わしかった。市場の倉庫からサモワールだの箱だの鋏までくすねて来るのを見るのは厭しかった。その不恰好な置かたや塗料の匂いまで癪にさわった。彼のまわり・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・今の私共のように外面的にこせこせと、一年二年など、数えあげていたのではないでしょう。生れ出た人間は、太陽を浴び、雨に濡れ、朝に働き夜に眠りして、徐々に育って来た。脆弱であった四肢には次第に充実した筋力が満ち男性は山野を馳け廻って狩もすれば、・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫