・・・何故なら、トルストイを見てもわかるようにこれまで作家と云えば上流の子弟で、十分教育もうけた人ばかりでした。が、ゴーリキイは小学校を卒業していないばかりか、大学は勿論中学も出ていません。一カペイキの借本をよんで育った、逞しい正直な鋭い精神をも・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイについて」
・・・いろいろの点からこの出来事は世界の視聴を集めた。ソヴェト同盟の大衆は、イタリーにいた五年の間にゴーリキイが、故国で行われている新しい建設に対して絶間ない注意を払い、その文筆活動を通してソヴェト同盟の建設の意味を世界に向って語っていたことを知・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・マダム・キューリーの夫妻関係にも幾分師弟としての影響があり、グレゴリイ夫人のよい作品を今日私共が持つことが出来たのは、友人としてのイェーツが、同時に彼女のよい先生でもあったためと考えられます。男性が最もよく女性の感化を受けた時、彼は天性の最・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・の中でトルストイが描いている家庭教師への憎みは貴族の子弟でもその背に笞をうけなければならなかったロシアの教育法というものを語っている。ゴーリキイの「幼年時代」には、一層荒々しさと暗さがむき出しな貧しい環境の中で人間的な稚い魂が目撃した恐怖と・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・ そう云う美しい女詩人が人を殺して獄に下ったのだから、当時世間の視聴を聳動したのも無理はない。 ―――――――――――――――――――― 魚玄機の生れた家は、長安の大道から横に曲がって行く小さい街にあった。所・・・ 森鴎外 「魚玄機」
・・・ 三、門下生に対する態度 門下生と云うような人物で僕の知て居るのは、森田草平君一人である。師弟の間は情誼が極めて濃厚であると思う。物集氏とかの二女史に対して薄いとかなんとか云うものがあるようだが、その二女史はどんな人か知・・・ 森鴎外 「夏目漱石論」
・・・財産としては、宅地を少し離れた所に田畑を持っていて、年来家で漢学を人の子弟に教えるかたわら、耕作をやめずにいたのである。しかし仲平の父は、三十八のとき江戸へ修行に出て、中一年おいて、四十のとき帰国してから、だんだん飫肥藩で任用せられるように・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫