・・・教育委員会法にしろその規定に従えば、現在決して民主的ではない官庁の支店にすぎないことになる。日本の一般人は、権力者たちが考え出したこの狡猾な委員会の性格のすりかえにたいして注目している。彼らは対日理事会その他のアドヴァイスによって日本民主化・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・少くとも、大衆が低い文化をもっている方が御し易いという視点にたって大衆の文化を導いてゆく大衆に対する理解と、その社会を構成している多数の人々がだんだんましな生活をやってゆける方向に導かれなければ全体として社会の発展や幸福はのぞみ難いものであ・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・の日本の現実と向い合ってこのテーマが出て来るからには、まさか、婦人の参政権に伴って、婦人の日常性の中で、公的生活と、私的生活とは、どう調和するか、或は、どう調和させて行くべきかというような、官僚じみた視点に立って出されたのではないであろう。・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・というのでなく、春大人は野に、都会にどう働くか、また子供はそれをどう助けるか問題をそういう視点から見てゆく。例えば春子供達は公園へ鳥の巣をかけにゆく。こういう社会的労作を現すのに或る子供は文章を書く、或る子供は作文が出来ないから絵で画く、ま・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・の柵がせまくるしくなって来ていることを語っているという感銘をうけた。視点を前方につけつつ、爪先は細心に足もとをふみわけようとされている。そこに、何となし無理を感じる。この微妙な無理は、報告の冒頭の「勤労者文学を民主主義文学のうちの一派とみる・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・盛に書くが、作家としての真の発展という視点に立って見るとそれは衰退への道を辿っている場合もあり、雑誌の上に目立つ作品は書かぬが、生活的にはその期間に却ってその作家にとって大切な成長がされているという場合もある。私は、自分の場合は、後の部に属・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・ 女ばかりの株式会社は、要するに御亭主の支店のようなものであり、女の細心で儲けて見せますというたちのものである。大阪辺では女ばかりの株式会社も既に珍しくはないであろう。アサヒグラフか何かに、この女株式会社の女重役連の顔合わせの宴会の写真・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ この視点から今日のありようを観察してみると、作家たちの間で、大衆、民衆を見る目は必ずしも一致しておらず、幾様かの種類を示している。ごく大ざっぱに見て、小林秀雄、林房雄、河上徹太郎、横光利一、室生犀星氏等のように、今日あるままの分裂の形・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・そして、時節柄いろいろの形で特種の工夫がされているのであるが、いわゆる現地報告として、相当の蘊蓄をもってその人なりの視点から書かれているのは『改造』山本実彦氏の「戦乱北支を行く」である。同じ『改造』に吉川英治氏の「戦禍の北支雑感」がある。こ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ きのうなどでも、有田外相の答弁には、英国の極東支店長みたいなことをいうナとか、駐日公使! とかいう彌次が盛んにとんだ。辛辣のようだけれども、本当の心持で日本の対外関係を案じている傍聴人の耳に、そういう彌次の濫発が果して頼もしい代議士連・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫