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・・・ お前じっとしてる方が可いけれど、ちっとも構わねえけれど、起られるか、遣ってみろ一番、そうすりゃしゃんしゃんだ。気さえ確になりゃ、何お前案じるほどの容体じゃあねえんだぜ。」と、七兵衛は孫をつかまえて歩行は上手の格で力をつける。 蒲団の外・・・
泉鏡花
「葛飾砂子」
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・・・ 今朝のこッたね、不断一八に茶の湯のお合手にいらっしゃった、山のお前様、尼様の、清心様がね、あの方はね、平時はお前様、八十にもなっていてさ、山から下駄穿でしゃんしゃんと下りていらっしゃるのに、不思議と草鞋穿で、饅頭笠か何かで遣って見えて・・・
泉鏡花
「清心庵」