・・・が説明によって理解したところでは、民主革命の推進力である労働者階級を主軸としてその同盟者としての農民、勤め人、中小商工業者、近ごろはアルバイトの必要から勤労生活にとけこみつつある学生、これらを概括して「勤労者文学」の基盤とするといわれたよう・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・むごさという感覚をとりおとした人間消耗の気風には承服しないでいるのである。 病気は病気であるという事実にたって処理しながら、わたしが仕事を中絶しないのは、階級的な「作家の資格において」民主革命の課題は文学の仕事そのものによってどうこたえ・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・この精神的影響の上に数万円のハガキ代と、運動費、夥しい労力の消耗との結果、新たに八つの俗地が提灯持ち的に紹介されるに過ぎず、結局日日新聞の広告が全国的に最も有効に行われた事実に帰着するのみだとすると、抜け目なき脳味噌よ、悪魔に喰われろ、と云・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
・・・もとより、わたし一人の作品が民主主義文学の全部を代表するものではあり得ないし、一人の作家の一定の作品に革命的課題の全部――教育問題から土地革命、中小商工業者、民族資本家の問題まで盛ることも不可能です。今日の要求にこたえるべき階級的文学の多面・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・又、現代社会の経営的機構は一個のXなる青年の生涯を冷酷な一部分品、しかも消耗したら手軽にいくらでもとりかえることの出来る部分品としてだけ扱っているので、謂わばこの世に自分という人間の生きているという固有名詞をせめて印刷物の上にでも主張したい・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・アジアにおける資本主義国として、西欧資本主義の利益探求の方向に同調し、その範囲で日本の資本主義を強化してゆくために、兵としての人民は重要な軍需消耗品である。自身の繁殖力によって消耗を自動的にカバーしてゆく消耗品である。日ごろは人民のつつまし・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・日大は、古橋さんというポスターのおかげで、大分便宜を得ているのだし、同窓生たちにとっては、われらの青春のチャンピオンであるわけだから、みんなが協力して、せめて消耗にふさわしい食事ぐらい何とか工夫はできないものかしら、というわたしの言葉に、古・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・の幸福と安逸とのために自分のすべてを消耗しているものにとっては実に明らかな事実について、むずかしい言葉でこんな大きい本を書く必要はなかったという風に、ゴーリキイには考えられた。スミスが提出する経済学の命題は、生活から直接獲得されたものとして・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ オックスフォード広場で、勤帰りを待伏せる春婦が、ショー・ウィンドウのガラス面に自分の顔を、内部にこの商品を眺めつつぶらつき、やがて三十分もするとロンドン市中、あらゆる地下電車ステーションの昇降機とエスカレータアは黒い人間の粒々を密・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・という声明が、内務、司法、商工、厚生四人の大臣によって、発せられたのである。新聞を一枚でも読む人は、このような取締方針を布いて、生産に従う人々が生産を高めようとするために、企業家に対してとる必要な行動を統制している権力が、たった一つも資本家・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫