・・・ 審査委員が如何に私情ないしは私利のためにもせよ、学位授与の価値の全然ないような低能な著者の、全然無価値かあるいは間違った論文に及第点をつけることが出来ると想像する人があれば、それは学術的論文というものの本質に関する知識の全く欠如してい・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・したがってこの孤立支離の弊を何とかして矯めなければならなくなる。それを矯める方法を御話しするためにわざわざこの壇上に現われたのではないから詳しい事は述べませんが、また述べるにしたところで大体はすでに諸君も御承知の事であるが、まあ物のついでだ・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・ところで彼の政党は私利をのみ目ざす人間の集団であって、自党の利益とは結局党員各自の私利である。彼らはこの集団の力によって政権を握り、その権力によって各自の私利をはかろうとする。しかし政治はかくのごときものであってはならない。明治大帝の詔にい・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫