・・・終に臨んで勇敢なるマットン博士に深甚なる敬意を寄せます。」 拍手は天幕をひるがえしそうでありました。「大分露骨ですね、あんまり教育家らしくもないビジテリアンですね。」と陳さんが大笑いをしながら申しました。 ところがその拍手のまだ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 三代目ということは、日本の川柳で極めてリアルに抉って描写されているが、今から先の三代目という時代の日本というものを文化の面でも切実深甚に考慮しなければならないのだろうと思う。世界は複雑に複雑にと推移しているのだから、単純きわまる主観人・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・では、ナチス治下の教育が、どんなにドイツの少年たちを毒しているかをあからさまにしたもので、映画化され、世界に深甚な影響をあたえた。エリカ・マンはまた子供のための冒険物語「シュトッフェルの海外旅行」をも書いているそうである。 ナチス・ドイ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ こう云うのも病気のため、ああ怒るのも痛みのため、お節の日々は、涙と歎息と、信心ばかりであった。 気の荒くなった栄蔵は、要領を得ない医者に口論を吹かける事がある。「一寸も分らん医者はんや、 私はもう貴方の世話んならんとえ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ けれども、この文化の中心の全国的な散開という新しい事実には、それだけの現象にとどまらず、明日の日本にとって、私たちの明日のよろこばしい生活にとって、深甚な意味をもっていると考えられる。 アメリカは勿論のこと、イギリスでもフランスで・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・年をとった女に歌心、絵心、それでなければ信心がある方がいいこと等。 これあるかな松茸飯に豆腐汁。昼はこれ。 M氏来。もう御昼はすみました。でもまあ一膳召しあがれよ。二度目の御昼だが美味かったそうだ。結構。皆おいしがったから、さだ嬉し・・・ 宮本百合子 「金色の秋の暮」
・・・これも深甚な興味があります。自分のこととして、今これから大長篇を書くことの出来るのをうれしく思います。それは必ず貫徹し得るから。まことに生活の結晶であるから。―― 林町の生活について以前二十枚近く書いたことがありました。ではこの次の手紙・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・その一年に注目すべき作品を生んだ作家たち、明日に属望される新人も、作品に即してあげられた。 これらのしめくくりは、しかし、去年という三百六十五日の間にわたしたちが生活と文学との肌身へじかにうけて生きて来た激しい暑さ、さむさ、ほこりっぽい・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ そういう憤ろしい思いで雨の中をのぼり下った琴平の大鳥居の下に、こういう小道や公会堂があって、暗いやるせない信心とはまるでちがう新しい気運が、そこで開かれている会合で活溌に表現されている現在が愉快であった。こういう著るしい歴史の対照のも・・・ 宮本百合子 「琴平」
・・・この三四年来、芥川賞、直木賞、文芸懇話会賞等々夥しい賞が懸けられ新人を招いている。ところで今日までこれらの賞を受けた人々は果して本質的な新人であったろうか。賞を与える側がその新人でないことに就いて消極的な言葉を添える有様であった。或る賞のた・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫