・・・兄にとっては、ただ冗談だけでそんなことをしていたのでは無く、自身の肉体消滅の日時が、すぐ間近に迫っていることを、ひそかに知っていて、けれども兄の鬼面毒笑風の趣味が、それを素直に悲しむことを妨げ、かえって懸命に茶化して、しさいらしく珠数を爪繰・・・ 太宰治 「兄たち」
・・・ただいま友人、大隅忠太郎君から、結納ならびに華燭の典の次第に就き電報を以て至急の依頼を受けましたが、ただちに貴門を訪れ御相談申上げたく、ついては御都合よろしき日時、ならびに貴門に至る道筋の略図などをお示し下さらば幸甚に存じます、と私も異様に・・・ 太宰治 「佳日」
・・・係ある皆様にお集り願って、一夜ゆっくり東京のこと、郷里の津軽、南部のことなどお話ねがいたいと存じますので御多忙中ご迷惑でしょうが是非御出席、云々という優しい招待の言葉が、その往復葉書に印刷されて在り、日時と場所とが指定されていた。私は、出席・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・笑罵す或拗レ枝妄抛 或は枝を拗りて妄りに抛て或被レ酒僵臥 或は酒に被いて僵臥す游禽尽驚飛 游禽は尽く驚きて飛び不レ聞綿蛮和 聞かず 綿蛮の和するを何若延二日時一 何若か日時を延ばせば暫遅・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・共謀の日時、場所は。」 勝田検事「七月十日から十五日ごろまで。三鷹電車区構内の整備第二詰所としようとしている古電車や、労働組合の事務所又はその附近、それから高相方などにおいて、よりより数回にわたって謀議が行われておりました。」 裁判・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫