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・・・食べたら古今の珍味だろう、というような話から、修善寺の奥の院の山の独活、これは字も似たり、独鈷うどと称えて形も似ている、仙家の美膳、秋はまた自然薯、いずれも今時の若がえり法などは大俗で及びも着かぬ。早い話が牡丹の花片のひたしもの、芍薬の酢味・・・
泉鏡花
「半島一奇抄」
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・・・それからまた晩秋の自然薯掘り。夕方山から土に塗れて帰って来る彼らを見るがよい。背に二貫三貫の自然薯を背負っている。杖にしている木の枝には赤裸に皮を剥がれた蝮が縛りつけられている。食うのだ。彼らはまた朝早くから四里も五里も山の中の山葵沢へ出掛・・・
梶井基次郎
「温泉」