・・・も若い、しかしながらその価値は滅すべくもない経験の慎重な発展的吟味のかわりに、敗北と誤謬とを単純に同一視し、ある人々は自分自身が辛苦した経験であるにかかわらず、男女の問題、家庭についての認識など、全く陣地を放棄して、旧い館へ、今度は紛うかた・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・哲学者としては彼は生命の創造力の無限に驚いて人智のかなたに広い世界を認めることになる。――偶像は再び求められるのである。 神は再びよみがえらなくてはならぬ。それがキリスト再臨によって証せられるか否かは我らの知るところでない。我らは神を知・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・すなわち解放せられた自然的欲望はその自由の悪用のゆえに貪婪の極をつくしてついに自分を地獄に投じた。人智の誇りであるべき自然力征服は、それ自身においては「文化」を意味し得るようなものでないということを遺憾なく立証した。ここで自然科学崇拝の傾向・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫