・・・ でもあの水位注味(深いんならよござんすよ。「ほんとですねえ、 自分でもよくそう思います。 でも性質だから仕方がありません。 だから『奇麗だ!』と思ったっていいかげんまで行けば立ち消えがして仕舞うし何かに刺撃されてもいい・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 鉢の土は袂屑のような塵に掩われているが、その青々とした色を見れば、無情な主人も折々水位遣らずにはいられない。これは目を娯ましめようとする Egoismus であろうか。それとも私なしに外物を愛する Altruismus であろうか。人・・・ 森鴎外 「サフラン」
・・・時にはテーマの屈折角度から、時には黙々たる行と行との飛躍の度から、時には筋の進行推移の逆送、反覆、速力から、その他様々な触発状態の姿がある。未来派は心象のテンポに同時性を与える苦心に於て立体的な感覚を触発させ、従って立体派の要素を多分に含み・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・巨椋池はその後干拓工事によって水位を何尺か下げた。前に蓮の花の咲いていた場所のうちで水田に化したところも少なくないであろう。それに伴なって蓮の栽培がどういう影響を受けたかも私は知らない。もし蓮見を希望せられる方があったら、現状を問い合わせて・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫