・・・ 第二回だか第三回だかの博覧会にも橋弁慶を出品して進歩二等賞の銅牌を受領した。この画は今何処にあるか、所有者が不明である。元来椿岳というような旋毛曲りが今なら帝展に等しい博覧会へ出品して賞牌を貰うというは少し滑稽の感があるが、これについ・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・食糧や、慰問品の受領に鉄道沿線まで一里半の道のりを出かけていた十名ばかりが、帰ってきたのだ。 宿舎は、急に活気づいた。「おい、手紙は?」 防寒帽子をかむり、防寒肌着を着け、手袋をはき、まるまるとした受領の連中が扉を開けて這入って・・・ 黒島伝治 「前哨」
・・・彼は受領書に印を捺して持って来る。「何と何です?」 不意に、内儀の癇高い声がひびく。彼女は受領書と風呂敷包を見っぱっている。 番頭は不意打ちを喰ってぼんやり立っている。「何にも取っとりゃしませんぞな! 何にも……」 お里・・・ 黒島伝治 「窃む女」
・・・特務曹長「これはどの戦役でご受領なされたのでありますか。」大将「印度戦争だ。」特務曹長「このまん中の青い所はほんもののザラメでありますか。」大将「ほんとうのザラメとも。」特務曹長「実に立派であります。」(曹長に渡す。曹長・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・もし還俗の望みがあるなら、追っては受領の御沙汰もあろう。まず当分はおれの家の客にする。おれと一しょに館へ来い」 ―――――――――――― 関白師実の娘といったのは、仙洞にかしずいている養女で、実は妻の姪である。この后・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫