・・・ところが根と枝は相関現象で似たような形になるんです。枝も根のように横にひろがります。桜の木なんか植えるとき根を束ねるようにしてまっすぐに下げて植えると土から上の方も箒のように立ちましょう。広げれば広がります。〕「そんだ。林学でおら習った・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・ヤグラの上で、盆祭りの赤い腰まきを木の間にちらつかせて涼んでいる農家のかあさんたちは、この稲田の壮観と、自分たちの土地というものについて何と感じているだろうか。この稲田に注がれている農村の女の労働力はいかばかりかしれないのに、日本の家族制度・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・文学の歩みがその社会的相関の相貌をつよく反映して、種々な交錯の中に推移してゆかなければならないことも亦当然であろう。 最近の数ヵ月間に、作家による戦争のルポルタージュが前面におし出されて来ている。一九三七年の日本文学について語るとき、こ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
ここには、一九三二年の一月の創刊で、日本プロレタリア文化連盟から出版されていた『働く婦人』に書いた短いものからはじまって、一九四一年の一月執筆禁止をうけるまで婦人のために書いた感想、評論、伝記、書評など四十篇が集められてい・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・そういう文学の砦として『新日本文学』は創刊されようとしているのである。〔一九四六年一月〕 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・そして、賢明なあなたは、そういう意味であの作品が含有している作家史的意味の重大さ及び、作家の才能の真の発展と社会的、境遇的事情との相関関係についての意味深い暗示を与えていることをよく理解していらっしゃるでしょうから。 作家野上彌生子は、・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・例えば、アムステルダムの大市場は、世界の物資を集散して目を瞠らせる壮観を呈した。同時にその市場を運営していたアムステルダムの市民は、ルーベンス、レンブラントの芸術を生む母胎ともなった。ハンザ同盟に加っていたヨーロッパのいくつかの自由都市は、・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・は一月創刊号から毎月発禁つづきである。しかも三月八日に築地小劇場で日本プロレタリア文化連盟が参加した三・一五記念の汎太平洋プロレタリア文化挨拶週間の催しの一つとして「働く婦人の夕べ」をやった時などは、開会一分で、中止、解散、であった。自分が・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・がよみ直されるのみならず、人間の神性とか獣性とかいう問題にからんで云々され、不安の問題が上程され、その深めるための文学的努力はされずに舟橋聖一氏は文学における行動性ということを主張しているし、なかなか壮観です。その行動性のモデルのようにゴン・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・『改造』八月に四十余枚書いたのはこれまでの研究――国際的な範囲で――が特にとりあげてはいない面――ああいう出身の一作家の発展とインテリゲンツィアとの相関関係を見きわめようとしたものであり、十分の自信があります。トルストイ、チェホフ、ツルゲー・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫