・・・ それはそんなに大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白い花を雲のようにつけ、秋は黄金や紅やいろいろの葉を降らせました。 ですから渡り鳥のかっこうや百舌も、又小さなみそさざいや目白もみんなこの木に・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・ すると給仕はてかてかの髪をちょっと撫でて、「はい、誠にお気の毒でございますが、当地方には、毒蛾がひどく発生して居りまして、夕刻からは窓をあけられませんのでございます。只今、扇風機を運んで参ります。」と云ったのでした。 なるほど・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ 何か言おうとするのでしたが、どうもひどくどもってしまって語が出ないようすでした。 てかてか髪をわけた村の若者が、みんなが見ているので、いよいよ勢いよくどなっていました。「貴様※みたいな、よそから来たものに馬鹿にされて堪っか。早・・・ 宮沢賢治 「祭の晩」
出典:青空文庫