・・・ 四年後のオリンピック東京招致に亢奮した感情や、今回のベルリン・オリンピックに出場した日本選手に対する感情、又一般にひきくるめて日本の役人たちがオリンピックに対して一般民衆の感情を向けようとして煽り立てたその方向や現実の結果について・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・ 文学の分野に出場して来た婦人の層は一九四六年以来、非常に立体的に広範囲になってきた。平林たい子の「盲中国兵」「終戦日誌」「一人行く」「こういう女」などは、作者のアナーキスティックな資質は変らないが、戦時中彼女がこうむった抑圧の記録とし・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・貴族主義的男の作家、評論家もあるが、昨今出場して来る婦人作家に一貫した特徴としてこの事が際立っているのである。知識階級の婦人、サラリーマンの妻娘たちの生活、一般の女の経済生活は浴衣一枚の実際から切りつまって来ている。その半面に現れている婦人・・・ 宮本百合子 「婦人作家の今日」
・・・員し、旧式な反民主的な婦人運動者たちまでを動員した政府は、世界平和大会やアジア婦人大会への代表の旅券は与えないで、おかいどりを着た田中絹代のために許可を与えたり、陸上競技の宮下美代子の国際オリンピック出場までと、人民の国際的協力の焦点をそら・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
古橋広之進君をはじめ五名の水泳代表選手が、来る十一日のパンアメリカ号で渡米する。全米水上選手権大会へ、これらの日本の若い精鋭が出場するようになったことは全日本の明るい関心をあつめている。合宿先である福田屋旅館の板前さんまで・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・半円形に並べられている議席はまだ空虚で、一段高くしつらえられた議長席のヨーロッパ風な背高椅子や、そのすこし下の左右に翼をはっている大臣席など出場を待たせる雰囲気を醸しながらステインド・グラスの格天井からさして来る曇った冬の日光の底に静まりか・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫