・・・ それからひるすぎ、枯れ草の中でチュンセがとろとろやすんでいましたら、いつかチュンセはぼおっと黄いろな野原のようなところを歩いて行くようにおもいました。すると向うにポーセがしもやけのある小さな手で眼をこすりながら立っていてぼんやりチュン・・・ 宮沢賢治 「手紙 四」
・・・大学士はすぐとろとろする疲れて睡れば夢も見ないいつかすっかり夜が明けて昨夜の続きの頁岩が青白くぼんやり光っていた。大学士はまるでびっくりして急いで洞を飛び出した。あわてて帽子を落しそうになりそれを押え・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・するとやっぱりよほど疲れていたと見えて、ちょっと椅子へかけたと思ったら、いつかもうとろとろ睡ってしまっていました。その甘ったるい夕方の夢のなかで、わたくしはまだあの茶いろななめらかな昆布の干された、イーハトーヴォの岩礁の間を小舟に乗って漕ぎ・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ つやつや光る竜の髯のいちめん生えた少しのなだらに来たとき諒安はからだを投げるようにしてとろとろ睡ってしまいました。(これがお前の世界なのだよ、お前に丁度あたり前の世界なのだよ。それよりもっとほんとうはこれがお前の中の景色 誰か・・・ 宮沢賢治 「マグノリアの木」
・・・傍から、忠一も顔を出し、暫くそれを見ていたと思うと、彼はいきなりくるりとでんぐり返りを打って、とろとろ、ころころ砂の斜面を転がり落ちた。「ウワーイ」 悌が手脚を一緒くたに振廻してそのあとを追っかけた。けろりとして戻って来ながら、・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
出典:青空文庫