・・・ そこであまがえるは、みんな走り寄って、とのさまがえるに水をやったり、曲った足をなおしてやったり、とんとんせなかをたたいたりいたしました。 とのさまがえるはホロホロ悔悟のなみだをこぼして、「ああ、みなさん、私がわるかったのです。・・・ 宮沢賢治 「カイロ団長」
・・・ そのとき誰かうしろの扉をとんとんと叩くものがありました。「ホーシュ君か。」ゴーシュはねぼけたように叫びました。ところがすうと扉を押してはいって来たのはいままで五六ぺん見たことのある大きな三毛猫でした。 ゴーシュの畑からとった半・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・さむらいはふところから白いたすきを取り出して、たちまち十字にたすきをかけ、ごわりと袴のもも立ちを取り、とんとんとんと土手の方へ走りましたが、ちょっとかがんで土手のかげから、千両ばこを一つ持って参りました。 ははあ、こいつはきっと泥棒だ、・・・ 宮沢賢治 「とっこべとら子」
出典:青空文庫