・・・ 東洋大学で同級であった男と同棲、子供、震災、京都の日活の用で、男京都に居るうち、友達にだまされて無一文、やどで、ひどいあつかい。 製畳機を作る店の月報を出すことを、宿やの主人とその家の主とできめ、月給二人の細君連で相談して四十五円・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ どんなにその女を女が愛しても やはり同性の相殺、心理的にあり、男ばかりの中で育った男と同じ欠点女ばかりの生活にはあり、〔欄外に〕度量 幻想の欠乏。安定専一のところ。┌そうでないかと思うと┤ 三宅やす――つや子と・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・一時、私は同性間の友情に、随分悲観的な見方をしたことがあった。女学校時分に相当親しかった友達などでも、だんだん時が経ち、生活の様子が異って来ると、どうもぴったり心が喰い合わない。正直なことをいうと感情を害し、自己の生活などを全然客観し得ない・・・ 宮本百合子 「大切な芽」
・・・而も、その友情が異性間に於ける場合には、自ら、同性間より微妙な節度と云うものがあります。決して、現在、日本で若い男女間の所謂交際と云うもののように、妙に陰翳があり、感情的で、危いものではありません。 通り一遍の知人である男子と、第三者を・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・何人かの男と友愛から進んで同棲し、そして何人かのそれらの男のもとから去った。理由は、この小説の最後をなしているアナンドとの深刻、複雑な政治的背景をもつ悲劇的別離をのぞいて、常に「深切や恋愛に憧れ」つつ「これらのものを恐れる」気持、「人は恋を・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・劉向高という、同じ年ぐらいの少しは文字のよめる男が、春桃と同棲している。向高は、春桃が一日の稼ぎを終って廂房に戻って来ると、いつも彼女の背をもみ、足をたたいてやった。そして商売の上では、価のある紙質や書類をよりわける。向高は、春桃をどうして・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ ヴィアルドオ夫人と知ってから後もロシアに住んでいた五〇年代の初め三年間ばかり、ツルゲーネフは非常な美人であるが、文盲な農奴の娘であるアブドーチャ・イワーノと同棲していたことがある。アブドーチャはツルゲーネフの娘を生んだ。ツルゲーネフは・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・どれにも、各所に籠城した罷業従業員達の動静や街上風景を写真ニュースで報じ、「怖し羞し背広の車掌」「非常時運転がこぼすユーモア」「笑いをのせて」などと云う記事が面白可笑しく出ている。一方山下又三郎の名で「総罷業の首謀者四十五名に解傭を通告」と・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
・・・よその経営に働く婦人たちは自分たちの境遇のつまりのところは、日本の製糸工場で同性たちが受けている待遇とつながったものであるという現実に対して、実に無智であった。自分たちの居場処や服装が糸取りをして働いている同性たちと違っているということだけ・・・ 宮本百合子 「働く婦人の歌声」
・・・ けれども、結果は悪く、三年同棲する間に、女性がその良人に対して持ち得る極限の侮蔑と、恥と憤とを味って離婚してしまいました。 生活の安全、幸福と云うものは、只、金でだけ保障されると思って媒妁人は、心から彼女の為を計って、却って、富の・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
出典:青空文庫