・・・また船舶の胴体に働く剪断応力の分布について在来の考えの不備な点を考察した論文がある。これも重要なもので、多くの外国の教科書等にも同君のこの論文が引用されている。また船が進水した時に気温と水温との差違のために意外な応力を生じる。これも以前には・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・よく見ると樹の枝は鳥の胴体を貫通していて鳥はあたかも透明な物体であるように出来上がっている。津田君は別にこれに対して何とも不都合を感じていないようである。樹枝を画く時にここへ後から鳥を止まらせる用意としてあらかじめ書き残しをしておくような細・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・におい、響き、移り、おもかげ、位、景色などというのも畢竟はこの潜在的連想の動態の種々相による分類であるに過ぎないと思われる。これらの方法によって「無心のものを有心にしなして造化に魂を入れる事」が可能になるのである。 常に俳諧に親しんでそ・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・荷電導体内部における電場の零なる事からクーロンの方則の厳密な事を証するが常であるが、吾人の実験し得る導体の大きさに制限のある事を忘れてはなるまい。この方則が電子間の距離まで適用されるだろうか。銀河の近辺までも同様であろうか。これに対する確答・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・この両の情はたとえその内容において彼此相一致するとしても、これを同体同物としては議論の上において混雑を生ずる訳であります。例えばある感覚物を通じて怒と云う情をあらわすとすれば、この作物より得る吾人の情もまた同性質の怒かも知れぬけれども両者同・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ 導体的の文芸家美術家も、必要かも知れないが、人間の本分として、凡ての人は自覚しなければならない。此所が大切な所で充分に説明しなければいけないんですが、今日は時間がないからこれでやめます。 私のいうた事は、あなた方と私どもとの職業の・・・ 夏目漱石 「無題」
・・・ あんまり強く、按摩をすると、彼女の胴体には穴が明くのであった。それほど、彼女の皮膚は腐っていたのだ。 だが、世界中の「正義なる国家」が連盟して、ただ一つの「不正なる軍国主義的国家」を、やっつけている、船舶好況時代であったから、彼女・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・夫婦正しく一身同体、妻の病気には夫の身を苦しめ、夫の恥辱には妻の心を痛ましめ、其感ずる所に些少の相違あることなし。世の男女或は此賭易き道理を知らずして、結婚は唯快楽の一方のみと思い却て苦労の之に伴うを忘れて、是に於てか男子が老妻を捨てゝ妾を・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・その相伴うや、相共に親愛し、相共に尊敬し、互いに助け、助けられ、二人あたかも一身同体にして、その間に少しも私の意を挟むべからず。即ち男女居を同じうするための要用にして、これを夫婦の徳義という。もしも然らずして、相互いに疎んじ相互いに怨んでそ・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・一身同体という証拠ででもあるのでしょうか。手術はせず、内科的になおしますが、いろいろ面倒くさい。流動物ばかりです。私の位でも苦しいことは相当であったから、あなたはさぞお辛かったでしょう。歩くなどということは実に苦しい。どうかお大切に。私の方・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫