・・・ 雑貨店の内儀に緒を見せて貰いながら、母は、「藤よ、そんなに店の物をいらいまわるな。手垢で汚れるがな。」と云った。「いゝえ、いろうたって大事ござんせんぞな。」と内儀は愛相を云った。 緒は幾十条も揃えて同じ長さに切ってあった。・・・ 黒島伝治 「二銭銅貨」
・・・ 雑貨店の内儀に緒を見せて貰いながら、母は、「藤よ、そんなに店の物をいらいまわるな。手垢で汚れるがな。」と云った。「いゝえ、いろうたって大事ござんせんぞな。」と内儀は愛相を云った。 緒は幾十条も揃えて同じ長さに切ってあった。・・・ 黒島伝治 「二銭銅貨」
・・・丸文字屋の内儀は邪推深い、剛慾な女だ。番頭や小僧から買うよりも、内儀から買う方が高い、これは、村中に知れ渡っていることである。その内儀が火鉢の傍に坐りこんでじろ/\番頭や小僧の方を見ている。金をごま化しやしないか見ているのだ。 番頭のと・・・ 黒島伝治 「窃む女」
・・・丸文字屋の内儀は邪推深い、剛慾な女だ。番頭や小僧から買うよりも、内儀から買う方が高い、これは、村中に知れ渡っていることである。その内儀が火鉢の傍に坐りこんでじろ/\番頭や小僧の方を見ている。金をごま化しやしないか見ているのだ。 番頭のと・・・ 黒島伝治 「窃む女」
・・・「ホホホホホ、大きな声をお出しでない、隣家の児が起きると内儀の内職の邪魔になるわネ。そんならいいよ買って来るから。と女房は台所へ出て、まだ新しい味噌漉を手にし、外へ出でんとす。「オイオイ此品でも持って行かねえでどうするつもりだ。・・・ 幸田露伴 「貧乏」
・・・「ホホホホホ、大きな声をお出しでない、隣家の児が起きると内儀の内職の邪魔になるわネ。そんならいいよ買って来るから。と女房は台所へ出て、まだ新しい味噌漉を手にし、外へ出でんとす。「オイオイ此品でも持って行かねえでどうするつもりだ。・・・ 幸田露伴 「貧乏」
・・・燵トント逆上まするとからかわれてそのころは嬉しくたまたまかけちがえば互いの名を右や左や灰へ曲書き一里を千里と帰ったあくる夜千里を一里とまた出て来て顔合わせればそれで気が済む雛さま事罪のない遊びと歌川の内儀からが評判したりしがある夜会話の欠乏・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・燵トント逆上まするとからかわれてそのころは嬉しくたまたまかけちがえば互いの名を右や左や灰へ曲書き一里を千里と帰ったあくる夜千里を一里とまた出て来て顔合わせればそれで気が済む雛さま事罪のない遊びと歌川の内儀からが評判したりしがある夜会話の欠乏・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・ちょうど歳暮のことで、内儀「旦那え/\」七「えゝ」内儀「貴方には困りますね」七「何ぞというとお前は困るとお云いだが何が困ります」内儀「何が困るたって、あなた此様に貧乏になりきりまして、実に世間体も恥かしい事で、斯様な裏長・・・ 著:三遊亭円朝 校訂:鈴木行三 「梅若七兵衞」
・・・ちょうど歳暮のことで、内儀「旦那え/\」七「えゝ」内儀「貴方には困りますね」七「何ぞというとお前は困るとお云いだが何が困ります」内儀「何が困るたって、あなた此様に貧乏になりきりまして、実に世間体も恥かしい事で、斯様な裏長・・・ 著:三遊亭円朝 校訂:鈴木行三 「梅若七兵衞」
出典:青空文庫